「今」に集中して心と体を見つめる。サウンドセラピスト・Hiko Konamiに聞いた
東京・表参道にて開催されるLypo-Cのイベント内にて、ワークショップを実施するHiko Konamiさん。
音を使ったリラクゼーション「サウンドバス」を提唱する第一人者として注目されています。
今回はHikoさんに、サウンドバスについて、そして自分自身を見つめて整える「メディテーション(瞑想)」の魅力について伺いました。
Hiko Konami
サウンドセラピスト。2005年に渡米し、ニューヨーク大学にて音楽療法に携わったことで、サウンドセラピストとして活動を開始。帰国後はイベントや企業にてサウンドバスを提供している。
─まず「サウンドバス」とは、どんな方法なのでしょうか?
サウンドバスは日本語でいうと「音浴」と書きます。
山の中だと「森林浴」と言われるように、サウンドバスは音に浸りながら行う没入型のリラクゼーションでメディテーションに近いものですね。
メディテーションと言っても色々種類があるのですが、最近皆さんがされるのは短時間で集中力を高めたり、頭をスッキリさせるような目的で行われるものが多いのではないでしょうか。
もちろんそれでも良いのですが、もっと長時間、例えば1時間くらいメディテーションすると、より深まってリラックス効果も変わってくる。
…なんですが、無音のなかで1時間瞑想するなんて、よほど慣れている人でないと難しい。それがサウンドバスだと、気持ちよく音を聞いているだけなので1時間があっという間なんです。
「音」というのは空気振動なんですが、私は楽器や声を使って、人間がリラックスしている状態の脳波や周波数に近い音を出しています。
周波数、振動数が近しいもの同士は「共鳴する」という物理法則があるので、体が無意識に反応し、共鳴し、深いリラックス状態を生みます。
深いリラックス状態、つまり副交感神経が優位になることで、体の緊張が解きほぐれて、呼吸が深くなり、全身の血流が良くなります。
血流が良くなることで体温が少しだけ上昇し、自己免疫や自己治癒が活性化するメリットがありますね。
大事故を経験し実感した「音」の力
─Hikoさんがサウンドバスを始めたキッカケは、ニューヨークで大事故を経験したことにありました。
元々ニューヨークで音楽の勉強をしていました。その中で「音楽療法」というものを知ったんです。
クラシック音楽をベースにした音楽教育のようなもので、音が持つ力や、音が人にどう作用するかなどを知る学問。結構テクニカルなものですね。
しかしある時、ニューヨークで大事故に遭いまして。
生死の境を彷徨いました。一命は取り留めたけれど、もう歩けない体になるかもしれない…。
肉体的にも精神的にも完全に参ってしまって。その後は心理カウンセラーに通うなどいろんな事を試す中で、とあるシャーマンに出会ったんですよね。
催眠療法、そして音を使った誘導瞑想のようなもので、それが初めてのサウンドバス体験でした。
初めて受けた時は本当に神秘的な体験で、涙が止まらないというか…でもどこか懐かしさもあったし、すごく深い経験をしました。
その経験を基に、今度は「サウンドヒーリング」という観点で、別の学校で学び直しました。
その学校では、音のもつ機能、構造、人類にとってその音とは何か?文明の中でどのように使われてきたかを民族音楽や文化人類学、歴史の中から学びました。
そして量子力学の側面からも、音が持つバイブレーション(空気振動)の効果や、身体や心に及ぼす影響などについて学びを深めていきました。
─テクニカルな音楽療法と、自身が体験したスピリチュアルなアプローチを組み合わせて、独自の「サウンドバス」を作り上げて行ったHikoさん。最初に「音」に興味を持ったキッカケは幼少期にあるといいます。
幼少期はTVがない家で、ずっとレコードで音楽を聴きながら育った子供でした。
私は「共感覚」を持っていて、音を聴くと色が見えたり、形を感じることができるんです。
例えば、バッハを聴くと、すごく白くて直線的なイメージが浮かび上がってきます。「ゴルトベルク変奏曲」を聴いたときは、白と薄い水色の線があって、奥行きが見える。など、幼少期はとくにはっきりと感じていました。
音を聴くとはっきりビジュアルで見えるんですよね。
音から連想して絵を描いてみたり、物語を作ってみたり、そういう遊びが大好きな子供でした。
世界が注目する「メディテーション」の魅力
─サウンドバスもそうですが、今やメディテーション(瞑想)は世界的ブームです。元々は東洋的なものですが、なぜ西洋で流行しているのでしょうか?
元をたどれば、60年代に起こったカウンターカルチャーのムーブメントの影響が強いと思います。アメリカやヨーロッパなどのキリスト教文化の中に東洋思想が入ってきたことによって、既存の価値観が大きく変化した文化的な革命。
アメリカだと、仏教が宗教というよりも「哲学」のような位置付けなんです。
私は仏教徒なのですが、ニューヨークで「I’m Buddhist(私は仏教徒です)」と言うと、めちゃくちゃクールな人に周りから思われる。
自分の哲学を持っている、自分のライフスタイルに責任を持っている、その生き方がカッコイイ!という価値観がありますね。
私が思うに東洋的なカルチャー、例えば、華道、茶道、武道など、「道」が付くものは全部メディテーションなんですよね。
すべては今ここに集中して、体の感覚を感じ取る行為。
「道=メディテーション」というものは、西洋のカルチャーにはない感覚かもしれません。
─アメリカでメディテーションが流行った背景には、時代の流れも大きく影響しているとも語ります。
アメリカでメディテーションが人気の背景には、健康保険が高いことが挙げられます。
気軽に病院に行けないから、「心と体は自分で守ろう!」という意識をみんなが持っている。
メディテーションはもちろんウェルネスやセルフケアがとても大切にされています。
日本のように国民健康保険がないので、医療費などの問題から病気になる前に防ぐ予防医療という考え方のひとつではないでしょうか。
「心」でいうと、カウンセリングの文化がしっかり根付いていますよね。
私が思うに、現代のカウンセリングの機能を、昔は教会が担っていたのでは?と思います。
昔の人は、毎週1回は教会に行き、罪を告白して赦しを乞う。自分の悩みや不安を口に出すことで心がスッキリしますからね。
教会ではいろんな人達が集まり、祈ったり、歌ったりすることで共感し合う空間でした。
でもそれが60年代のカウンターカルチャー、ヒッピー思想とともにキリスト教や、教会カルチャーに変化がおこり、東洋的な思想の広がりや多様なカルチャーを受け入れてゆく中で、人々の教会ばなれが加速していく。
また、アメリカの経済的な側面が加速したことも大きいと思います。
金融やテック企業が急成長する中で、過酷な労働環境が問題視されるようになりました。彼らは途中で病気になって辞めるか、過労で死ぬか、のような二択しかない世界で生きていた。
そんな中で働いていると「心の問題」が出てきますよね。
スティーブ・ジョブズがメディテーションを取り入れたのは有名な話ですが、Googleなどのテック企業もどんどん社内プログラムにメディテーションを取り入れ始めましたよね。
そのこともあり、2000年代以降は急激にメディテーションが普及し、リーマンショック以降大きく変化した価値観では人間本来の幸せについて語られることが増え、さらには健康やウェルネスが巨大産業になり──という流れで、今があります。
私が思うに、「精神性」を人生の中心に据えている人が増えたように感じます。
アメリカで人気のジョーゼフ・キャンベル、アラン・ワッツなどの東洋哲学や禅の教えに影響を受けた思想家もメディテーションやセルフケアの大切さを言及しています。
今の幸せが、未来の幸せにつながる
─日常にメディテーションを取り入れることで、どんなメリットがあるのか、教えてもらいました。
「心の安定」と「自分に意識を向けることができる」、この二つでしょうか。
私が帰国してTVを見たときに、とある風邪薬のCMを見ました。
旦那さんが体調悪くてしんどい…けど仕事は休めない。でも薬飲んで頑張ろう!みたいなCMで、「え、本気?」となりました。
さすがにコロナで状況は変わったと思いますが、それでも会社を休めないからと検査をしないとか、結果を偽るケースがあるなどのニュースもありましたね。
仕事したところでパフォーマンスは落ちるから休んだ方が良いに決まっている。自分にも会社にとっても良くない。でも日本では頑張ることに重きが置かれていますよね。
でも日々メディテーションするなりして自分に意識を向けていれば、「今自分はどんな状態で、何を求めているか?」をきちんと知ることができる。
私たちが生きる目的って、幸せ、すなわち心と体を良い状態にすることじゃないですか。
お金を稼ぐことも大事だけれど、無理して我慢して得た先に果たして幸せはあるのでしょうか。
今ボロボロの状態なのに、未来に対して夢と希望を持つというのは、私にとってはファンタジーのように感じます。
今の状況がベースになって、未来が作られます。
今が楽しくて幸せと思ったら、その道なりに未来ができる。
そのためには「今」に集中して、今の自分の心と体を健やかに保つこと。それが大切だと思いますね。
私が不運でもありラッキーだったのは大事故によって臨死体験をしたこと。
「人って簡単に死ぬんだな…」ということを体感することができたので、今生きていることはすべて“おまけ”に感じる。
だからこそ、いつ死んでもいいように、今を一生懸命に生きようと思っています。
自宅で行うメディテーション・アドバイス
─メディテーションの効用について教えていただきましたが、自宅で実践する方のためにアドバイスをいただきました。
メディテーションするタイミングは「朝」をオススメしています。
夜にすると、一日の総括をしちゃうんですよね。「ああすればよかった…」とか。
でも朝だとフレッシュな気持ちで臨めるので、タイミングとしては良いですね。
あと、メディテーションで大事なことは継続すること。
西洋ではメディテーションのことを「心のジム」という表現がなされています。
ジムに行っても、1〜2日で体は変わらないじゃないですか。でも日々継続する事でジワジワ変化が訪れる。
実際に、1日15分以上のメディテーションを8週間続けると、脳の機能や形状が変わるという研究結果が出ています。
もし継続が難しいという方は、コミュニティやグループワークに参加するのも一つの手ですね。
私は、毎朝15分間メディテーションをするというオンラインコミュニティを主催しています。コロナ禍で始めてもう2年以上行っています。
参加者だけでなく、私自身も継続できる仕組みなので、とても良いなと感じています。
─Hikoさんといえば、ライフスタイルにLypo-Cを取り入れてくれています。普段の飲み方とは?
Lypo-Cは毎日飲むんですけど、特に忙しい時は3包を一気に飲んだりとか(笑)
最初にLypo-Cを教えてくれた方に、「3包飲みが良いよ!」とオススメされて。
最初は味が気になって何かで割って飲んだりしていましたが、最近はそのままチューチュー吸って飲んでいます。飲むと目がパッチリ開くし、呼吸も整う気がしますね。
─7月16日(土)から開催するLypo-Cのイベント。テーマは『Well-being~感覚を研ぎ澄まして、自分を知る~』です。Hikoさんが自分を知るために心がけていることとは?
メディテーションの話とも被るのですが、「今に集中する」ということですね。
私の場合、マルチタスクをしないように気をつけています。一つのことをする時は一つのことに集中する。
音に関しても、あまりヘッドフォンで音楽を聴かないです。
音楽を聴く時は音楽を聴くことに集中する。外を歩いている時は外を歩く、という感じで。
性質によると思うんですけど、私の場合マルチタスクだと集中できないんですよね。
一見、効率が悪そうでも一つひとつ丁寧に愛しむように、私は自分の感覚を大切にしていきたいなと思っています。
サウンドバスを体験できる!Hikoさんによるワークショップが開催
Lypo-Cのリアルイベントが、7月16日(土)〜18日(月・祝)の期間、東京・表参道にて開催!
イベント内では、Hikoさんによる「サウンドバス」ワークショップを3日間開催します(要予約制)。
参加人数に限りがありますので、ぜひご興味ある方は以下からご予約ください。
※ご好評につき、予約は終了となりました。
Edit/Text : Makito Uechi
Photo : Eisuke Komatsubara
取材協力:aloof home(www.aloof-home.com)
東京都港区南青山3-2-9