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AWAKENING vol.6|不調はコントロールできる?医師がおしえる病気にならないライフスタイル

SUMMARY

  1. ・ほとんどの病気は「生活」で決まる
  2. ・女優時代に鍛えた「人の心を掴む」スキル
  3. ・医師が実践する、心と体の健康法
最近の鬱々とした世の中で、心と体の「不調」に悩む人は増えたと思います。 不調や病気、それらを未然に防ぐにはどうすればいいのでしょうか? 今回は「食事」の観点から、不調や病気を防ぐライフスタイルについて、「山本メディカルセンター」院長・齋藤真理子先生に教えてもらいました。 普段の食事アドバイスから、多忙を極める先生が実践する「食事術」まで、必見です!
齋藤 真理子 神奈川県・逗子「山本メディカルセンター」の2代目院長。 医師、医学博士、形成外科学会専門医、分子栄養学認定医。テレビ、雑誌などメディア出演も多数。

ほとんどの病気は「生活」で決まる

齋藤先生のクリニックには、具体的な症状はないものの、「なんとなくおかしい…」「疲れが取れない…」という、いわゆる「不調」を訴えてクリニックに訪れる方が多いそう。 齋藤|不調や病気、そのほとんどは遺伝的要素にプラスして生活習慣からくるものです。 例えば、高血圧、高脂血症、糖尿病、ガン、頭痛、手足の冷えといったものから、女性ホルモンによるPMS、ニキビなど肌のトラブルまで。 であれば、その人の生活(食事、睡眠、1日の行動)にしっかりと耳を傾けられるかが大事。 なので、当院では患者さんとのコミュニケーションを大事にしていて、私自身は「問診で9割決まる」と思っています。 問診だけで解決して、お薬を出さない、なんてこともよくありますね。 いかにその方の困りごとに耳を傾けて、かつ適切な対応ができるか。それらを意識して、日々患者さんに向き合っていますね。  

生活のベースは「食」。まずは十分なタンパク質を!

病気はほとんど遺伝的要素と生活習慣によるものと話す先生。なかでも「食」の影響は大きいといいます。
齋藤|分子栄養学でいえば、わたしたちの細胞は食べ物からできています。 なので、普段の食生活はとても大事。
問診では、患者さんに「普段どんな物を食べているか?」を細かくヒアリングしていますね。 なかでも現代人に圧倒的に不足しているのは「タンパク質」。 女性であればプラス「鉄分」ですね。
「タンパク質は大事」と知っていても、実はみなさんが思っている以上に日々摂る必要があります。 1日の目安でいうと、体重1kgあたりタンパク質1g(運動している人は、体重1kgあたりタンパク質2gが目安)。 例えば体重60kgの方だと、1日60gのタンパク質を摂る必要があります。 もっと分かりやすい目安だと、1日3食、手のひらサイズくらいのタンパク質を食べるイメージです。
例えば── ・シャケ|2切れ ・煮卵|3つ ・ハンバーグ|250g
量が多すぎると感じると思いますが、これを毎食摂って、実はちょうどいいタンパク質量なんです。それぐらい1日のタンパク質を摂るのは本当に大変! これを考えるとおやつを食べている暇なんて無いんですよ(笑) おやつを食べるくらいだったら、タンパク質を摂取できるものを食べた方が断然いい。
女性で、ダイエットのためにサラダだけを食べる人がいますが、かえって逆効果。 タンパク質を摂らないと髪も肌もパッサパサになりますから、良い痩せ方ではないですよね。 先生は、私たちが陥りがちな「栄養の間違い」についても指摘します。 齋藤|食事では、まずは十分にタンパク質を摂ることからスタートしましょう。 そのベースができてからはじめて、ビタミン、ミネラルなど他の栄養素の話になります。
料理に例えると── 食材|タンパク質、(良質な)脂質、糖質 調味料|ビタミン、ミネラル、その他の栄養素
つまり、食材がないままに調味料だけ良いものを揃えても意味がない。 ヒマラヤの高級な塩を使っても、そもそも食材がダメなら美味しくはなりません。
食材に調味料を合わせるからこそ、はじめて料理として完成します。
特に女性は、ビタミンやミネラルといった栄養素を摂ることに熱心ですよね。 もちろん大事ですが、あくまでも栄養の補助。 タンパク質量を十分にクリアできた人だけが、添加物に気を付けたり、第7の栄養素(リコピンやポリフェノールなど)を積極的に摂るなどして、次の段階に進んでOK!
繰り返しになりますが、体のベースとなるのは「タンパク質」です。

女性は「鉄分」を忘れずに!


齋藤|タンパク質と合わせて、女性であれば毎日必ず摂ってほしいのが「鉄分」です。 女性の場合、毎月生理があって200ccぐらい血液が失われるので、日々鉄分を摂らないと慢性的な貧血状態になります。
貧血があると酸素が足りなくなり息苦しくなるので体が省エネモードになってしまう。力が出せない、声が張れない、深い呼吸ができないなど、あらゆる不調につながります。
鉄分の摂り方はいろいろありますが、簡単なのは料理で取り入れること。 「鉄鍋」を使って料理をすると、日々の食事で自然と鉄分が摂れます。
もっと簡単なのはぬか床に入れるような「鉄玉」を使うこと。炊飯器で炊く時にお米と一緒に入れて炊いたり、お湯を沸かすケトルに入れたりと、いろんな使い方ができますよね。

「血糖値」はメンタルにも影響する

食事について先生がオススメしていることは、「血糖値のコントール」。 血糖値というと、主にダイエット目的のように感じますが、実は自律神経にも関わり、「メンタル」にも影響していると話します。
齋藤|意外かもしれませんが、気分の乱れの多くは「血糖値の乱れ」によるものです。 例えば、朝に甘いソフトドリンク飲むと、血糖値がウワーっと上昇して、そこでインスリンが出てくるとそれを是正しようと、アドレナリンのホルモンなどが使用され興奮状態になってしまう。 この血糖値の乱高下があると気分も不安定になるし、具合が悪くなる。メンタルにとても良くないんです。
特に気をつけたいのは、寝る前の甘〜いドリンクやスイーツ。 寝る前に糖分をたっぷり摂るなんて、血糖値が上がりまくって脳が興奮状態になり寝られなくなります。 甘いもの(糖質が多いもの)を食べるのがダメではなく、寝る直前は避ける、一気に食べずにちょこちょこ食べる、など工夫しましょう。

女優時代に鍛えた「人の心を掴む」スキル

患者さんとのコミュニケーションを大切にしている先生。 そのキッカケは、医療の現場ではなく、意外なところからきていました。 齋藤|クリニックでは1日100人以上の方が来院するので、1人につき5分くらいの持ち時間しかない。 そんな限られた短い時間の中では、いかに「相手の心を掴むか」が大事になってきます。 この「相手の心を掴む」ことを学んだのは、学生時代の女優経験が生きているかなと思います。 話は脱線しますが──私は医学生の時に、バンドで歌ってみたり、女優としてミュージカルやドラマに出たりと、学業以外にもさまざまな活動をしていました。 ある月9ドラマに、ちょい役で出演した時のことです。 有名俳優さんが出る人気ドラマの現場。相当緊張していました。 私はエキストラのような小さな配役なので、楽屋に入るときは周りに恐縮して「あ、すいません…、すいません…」と縮こまっていたんですよね。当然、誰も私のことなんか気に留めない。
それを見たマネージャーさんが、「あなたはプロの役者なんだから堂々としていなさい!役の大小は関係ないんだから」と叱られて、ハッと気づきました。 そして次の現場からは、堂々と胸を張って、颯爽と「おはようございます!」と楽屋入りしたんですよね。 そうすると、以前は無視してした人たちも「あれ…あの方誰だっけ?」となり、そこから「今日は何役なんですか?」「お、医大生なんですね!」と、徐々にコミュニケーションが生まれていったんです。
この経験から、「第一印象」の大事さを感じました。 堂々と自信を持ってふるまうことで自分に価値が生まれる。すると相手の心を掴むことができる。 そんな女優業で学んだことは、今の仕事にも生きています。

医師が実践する、心と体の健康法

2つのクリニックの院長を務め、プライベートでは2児の母。 公私ともに多忙を極める先生ですが、多忙な中でも「心身の健康」を作る秘訣について聞きました。 齋藤|意識しているのは「温める」と「波を作らない」ことですね。 体が冷えると副腎疲労になりやすいので、日頃から手足を冷やさないように気をつける。 お風呂では、マグネシウムと炭酸のバスソルトを入れて半身浴をしていますね。 あとは「波を作らないこと」。
意外かもしれませんが、私はONとOFFを作らないタイプなんです。 仕事中に患者さんと接するときも、「お、元気でしたか〜!」と友達のような気さくな態度で接して、仕事だからと特別な気を張らないようにしています。
そして仕事から帰っても、子供たちとフラットに接する。「お母さん今日はホント疲れちゃったよ〜」といった感じ。 意識的に気持ちの波を作らないのは、自律神経を緊張させない、アドレナリンモード(興奮状態)を作らないためです。 基本的に余分なアドレナリンが出ることはしないので、カフェインも取らないですね。 アドレナリンは大事な力を出す時に温存しておきたい。
カフェインを摂るとアドレナリンが出て頑張りすぎちゃう、副腎疲労になりやすい。 副腎疲労になると、急に力が出なくなります。
よく、コーヒーを飲んで元気を出す(アドレナリンを出す)人は多いと思いますが、アドレナリンが出るとお腹が空かなくなります。 「コーヒー飲んで、食事は少量つまめばOK」というのは危険で、命を縮めているような行為。分子栄養学的にも、なるべくカフェインは摂らない方がよいでしょう。
豆知識ですが、体の中で1番ビタミンCが使われている臓器が「副腎」なんですよね。なので身体をケアするためにも、日々積極的にビタミンCを摂った方がいいといえます。

多忙な中でも「タンパク質・鉄・ビタミンC」を摂るためには?

先生は、日々「タンパク質・鉄・ビタミンC」の3つを意識的に摂っているそう。 激務の中で、どうやって効率的に摂取しているのでしょう?
齋藤|毎日「お味噌汁」を飲みます。 晩ごはんでちょっと多めに作っておいて、魔法瓶に入れて仕事場にも持参します。 魔法瓶に入れるので、飲みやすいよう具なしのお味噌汁。出汁をいりこにすることでタンパク質と鉄分がたっぷり摂れるし、シジミにすれば亜鉛も摂れますからね。 お味噌汁は有効活用できるので本当にオススメです!
鉄分も毎日摂っています。鉄玉はいろんな料理に活用していて、ウチに10個くらいありますね(笑) 先生は、日々の食事でビタミンCを摂っているほか、Lypo-Cも活用していると話します。
齋藤|元々、クリニックでは「リポスフェリック」という海外製のビタミンCサプリメントを取り扱っていたのですが、味が本当にマズイ…。 そのあとに柳澤厚生先生(医学博士、分子栄養学の権威)がLypo-Cを監修したと聞き、移行したという感じです。せっかく摂るのであれば、効率よく摂りたいですしね。
私は、コールドプレスジュースに入れて飲んでいます。 (血糖値を上げないために)一気に飲むというより、仕事の合間にちょこちょこと飲んでいますね。

齋藤先生の「健康観」

患者さんの健康を守り、そして自らも健康的なライフスタイルを実践している齋藤先生。 最後に、先生が思う「健康観」について伺いました。
齋藤|そうですね、今の状態で満足している、今が幸せだと思うこと、でしょうか。 そのために日々気をつけていることは、なるべく愚痴を言わないこと。 そして天狗にならないこと。 院長をしていると、「お医者様!」みたいに持ち上げられることが多々あるので、天狗になって自分を見失わないように気をつけていますね。 「満足していて笑っていられること」。 それがあれば「健康」なんじゃないかなって思いますね。